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CULTURE

「人・この町を拠点に、未来が動く」(2)

相馬工業株式会社 代表取締役 相馬純氏ロングインタビュー

停電から町を守るために
相馬工業が「くれよん」にともした
防災の灯り

2026年1月、平塚市の児童発達支援施設「こども発達支援室 くれよん」に、災害時電力自動給電システム「レジリエンスチャージ」が設置された。有限会社相馬工業から平塚市への寄贈によるもので、市としては初めての導入となる。停電が起きるとEV車や発電機などの外部電源へ自動的に切り替わり、照明など最低限の電力を確保できる仕組みだ。暗闇の中に灯りを残すことができるという一点が、災害時の安心を大きく左右する。

被災地で知った
「電気が消える夜」の重さ

この寄贈の背景には、相馬工業代表取締役・相馬純さんの被災地での経験がある。相馬さんは「塗魂ペインターズ」として、能登、熊本、東北など全国の被災地でボランティア活動を続けてきた。そこで目にしたのは、電気が消えた瞬間に広がる混乱だった。「電気が消えるというのは、本当に大きなストレスとなる。パニックになる人をたくさん見た」。 暗くなればパソコンは使えず、冷蔵庫は止まり、ペットを連れて避難できない人が現れる。強盗被害への不安も広がり、病院では命に関わる医療機器が止まる。そんな多くの場面にも遭遇した。「災害だけでなく、停電は命に直結する」。その言葉には、現場で積み重ねてきた実感がにじむ。
停電は生活を一気に崩す。生活の質や精神的な不安だけでなく、現実的に衛生状態は悪化する。また命にかかわる問題にもなり、「本当に全部が終わる」と感じるほどの光景が広がったという。だからこそ相馬さんは、「災害が来て停電になってからでは遅い」と強く思うようになった。

“予防の専門家”としての防災

その危機感を、市長のもとへ直接伝えに行った。「まだ災害経験のない平塚は、正直よちよちです。本当の現地に行ったら分かる。災害が起きる前に備えなければいけない」と。 相馬工業は、住宅塗装やリフォームを通じて建物を守る“予防”の仕事を続けてきた。塗装は、壊れてから直すのではなく、傷む前に手を入れる仕事だ。相馬さんは「防災も同じ。僕らは予防の専門家だから、事前に備えることが大事だ」と語る。建物を守る技術と、防災の考え方は地続きにある。

ボランティアの原点と、電気の大切さ

そもそも相馬さんがボランティアを始めたきっかけは、「職人=きつい・汚い・危険」という3Kのイメージを変えたいという思いだった。希望が持て、皆が共存共栄できる3Kの仕事にしたい。そのために、小中学校で子どもたちと一緒に外壁を塗ったり、遊具を塗ったりする活動から始めた。 しかし被災地に足を運ぶ中で、光のない夜のすさまじさに出会い、電気の大切さを深く実感するようになった。そこでこのシステムを見つけ、自社で試し、その有効性を確かめたという。

地域に灯りをともす、
長期的な取り組み

相馬工業では毎年、利益の一定割合を必ずボランティア活動に充てると決めている。今回の寄贈もその延長線上にある。「起きた後に騒ぐのでは遅い。防災はスピードが命」。自治体の支援は多くの手続きを経るため時間がかかるが、相馬さんは被災地でその“遅さ”も見てきた。だからこそ自社の決断で動く、そして短期的ではなく、いつ起きるかわからない災害を見て長期的に続けることを選んた。
「自身の育った平塚が好きだし、茅ヶ崎にもお世話になっている。この街でやれることを、やり続けたい」。その言葉には、地域への率直な思いが宿る。
この災害時電力システムは、福祉施設に限らず、一般企業や医療機関、地域の事業所などでも導入が可能だ。相馬工業では、施設の規模や用途に応じた導入相談にも対応している。
創業50年を迎える相馬工業は、芯の強さと優しさを併せ持つ活動を、これからも続けていく。「くれよん」にともった小さな灯りは、私たち一人ひとりに「自分にできる備え」を静かに問いかける。

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