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CULTURE

魚「さかな」

湘南の魚の話

相模湾の恵みが湘南の街へ届くまで

平塚には、相模湾の恵みを自然に優しい”定置網漁”で獲り、私たちのもとへ届ける網元がいる。「川長三晃丸」と「日海丸」─その二つが、相模湾の豊かさを支える担い手だ。両網元が獲った新鮮な地魚は、地元の魚屋や料理店を通じて街の食卓へと届く。その背後には、海と向き合い続ける漁師たちの情熱がある。今回は、そんな海の恵みを届ける二つの網元に、定置網漁の魅力や漁への想いをうかがった。

漁師(大将)
磯崎晴一(Isozaki Seiichi)

祖父の代から続く川長三晃丸の三代目大将・磯崎晴一さん。大学卒業後、石川で修行を積んだのち、平塚へ戻り家業を継ぐ。約40年にわたり自然に優しい”定置網漁”で、相模湾の恵みを届ける。今もなお、息子の和洋さんとともに相模湾の豊かさを守りながら、伝統の技を息子へと受け継いでいる。

網を開けるまで何が出るか分からない「海の宝箱」

AM 1:00 | 出港

夜中12時半、街が静まり返る頃に漁師の一日は始まる。獲れた魚の鮮度を保つために、冷やした海水を船に積み込み、夜中1時に海へと出港。

AM 2:00 | 網起こし

“定置網漁”は、魚を追いかけて根こそぎ獲るのではなく、海の状況に身をゆだね、自然と網に入ってきた魚を獲る“受け身の漁”だ。

AM 2:30 | 水揚げ

AM 3:00 | 選別・出荷作業

3時ごろに港に戻り、水揚げされた魚の選別・出荷作業は、鮮度が落ちないよう急ぎ行なわれる。終わるのは朝5時、漁獲量によっては、7時を過ぎることもある。

自然に優しい定置網漁で
相模湾の恵みを受け止める

自然と網に入ってきた魚を獲る“定置網漁”を行なう川長三晃丸の大将は、「自然が相手だから思い通りにいかない日も多い。紆余曲折ある仕事だからこそ平凡な毎日がないのが、面白いところ」と語る。出港時には、今日の海がどんな表情を見せるのか胸を高鳴らせ、暑い夏も寒い冬も、漁師たちは力強く網を引き上げる。たくさん獲れた日や大物、高級魚に出会えた日は、何度経験しても心が躍るという。春から夏にかけての相模湾は魚影が濃く、漁師にとって最もワクワクする季節。一方で、冬の海は静けさに包まれ、漁獲量も穏やかになる。海の状況や季節の変化、潮流や風の強さに左右される中、自然に寄り添い、流れに身を任せながら魚と向き合う。それが川長三晃丸の漁の醍醐味である。

変わる海と向き合い、
漁業の伝統を次世代に


昔に比べ漁獲量は減り、気候や生態系の変動、温暖化による魚の種類や時期のずれも感じるという。海で生きる漁師自身だからこそ「海が変わった」と重く実感している。それでも、大将は自然の流れには抗わず、受け身の漁法を貫き続けている。漁師の仕事は魚を獲るだけでなく、船のエンジンや油圧、電気や塗装、網の修理まで、あらゆる技術を習得する多能工の仕事だ。一通りの仕事が身につくまでに10年を要し、いまだに学ぶことは尽きない。現在は、息子も一緒に漁に出ており、長期間修行を積んで戻った息子は頼もしい存在。大将はこれまで培った技術や経験を、息子や若い世代に伝え、変化する海の中でも漁業の伝統を受け継ぎ、相模湾の海の資産を未来へ残していきたいと考えている。

漁師が願う、
地魚を楽しむ日常

漁師として、大物や高級魚に出会えた瞬間の喜びはもちろん大きい。しかし、それ以上に嬉しいのは、「おいしかったよ」と言ってもらえることだという。かつては市場に出したらそれで終わりだったが、今は直売店やマルシェなど、地元の人々の反応を直接感じられる場があり、その声が仕事を続ける力になっている。一方で、魚屋は昔の3分の1ほどに減り、地元の人に地魚を届けられる場所は限られてきている。大将は「獲れた魚を地元で食べてもらいたい」と強く思い、地産地消で完結することこそ、鮮度の良い魚や季節ごとの味わいを最大限に楽しむ理想的な形だと考えている。海と港のあるこの地に住む人たちには、地元の魚をもっと日常の食卓で楽しんでほしいと願っている。

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